英語ツールは論文を上手くしない——本当に必要なのは何か

論文ツール

by シツカン(University of Leicester 博物館学修士・Merit)

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DeepLで翻訳して、ChatGPTで校正して、Grammarlyでチェックする。 それで修士論文が書けるかというと、書けない。 英語ツールは「英語の正確さ」を補助するが、「論文の質」を上げる機能はない。この違いを理解していないと、ツールに頼るほど論文が薄くなる。

GrammarlyとChatGPTが「できること」と「絶対できないこと」

ツールが補えること:文法・スペルのミス、翻訳・言い換えの提案、類似度チェック(Turnitin)、読みやすさの改善、引用形式の確認 ツールが補えないこと:論理の筋、問いの質、先行研究との対話、Evidenceの選択と解釈、批判的分析 ツールは「書いたものの質を高める」が、「書くべきことを考える」のは人間にしかできない。

「ツールが充実した時代の留学生が羨ましい」と思う理由

私が修士論文を書いた2018〜2019年、DeepLはまだ初期段階でChatGPTは存在しなかった。Google翻訳がようやく使い物になってきたくらいの時代だ。 英語の文章を書くのに、辞書とThesaurus(類語辞典)を引きながら書いていた。時間はかかったが、ひとつひとつの表現を自分で選ぶ作業が「英語で考える力」を鍛えた側面はあったと思う。 今のツールはその作業を大幅に短縮できる。ただし、短縮された時間を「論理を考える」「先行研究を読む」に使わなければ、ツールのメリットは半減する。

ツールの正しい使い方

DeepL / ChatGPT → 「草稿から清書」の補助として使う 日本語で考えたことを英語に変換する、または書いた英語の表現を改善するために使う。ゼロから英文を生成させて提出することではない。 Grammarly / LanguageTool → 「最終チェック」として使う 本文が完成してから文法・スペルミスを確認するために使う。書きながらGrammarlyを見ながら修正していくと、思考が途切れる。 Notion / Zotero → 「管理ツール」として使う 論文のアウトラインや文献管理に使う。これはツールで補える作業だ。

修士論文をMeritにした「ツール以外」の3要素

ツールではなく、次の3つだ。 ① 先行研究を読む量 論文の質は、関連文献をどれだけ読んだかに比例する。読んでいない人の論文は「根拠が薄い」「批判的分析がない」と指摘される。ツールは読む量を代替できない。 ② フィードバックを受けて書き直す回数 一発でいい論文は書けない。指導教員からのフィードバックを受けて書き直すプロセスの中で論文の質が上がる。 ③ 「なぜそう言えるか」を自分に問い続ける時間 「この主張の根拠は何か」「この引用は何を示しているか」を考え続けることが、批判的思考の訓練になる。ツールはこの問いを立ててくれない。

まとめ

英語ツールは便利だ。使わない理由はない。 ただ、ツールが「論文を書いてくれる」と勘違いしているとしたら、それは危険だ。 ツールは補助だ。論文の核心——問いを立てて、先行研究と対話して、根拠をもって主張を展開する作業——は自分でやるしかない。 ツールに頼れる分だけ、読むことと考えることに時間を使う。それがツールのある時代の正しい使い方だと思う。

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この記事を書いた人:シツカン。University of Leicester 博物館学修士(Merit)。

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